今ではすっかり携帯キャリアの一角、むしろ強者として定着した感のある「Softbank」ですが、数年前までは「Vodafone」だったことを、皆さん覚えておいででしょうか。
そういやそうだったな、というくらい今では当たり前の存在になってしまったので、孫さんは本当にすごいなと思いますが、僕はやはり、あの日の夜を忘れることができません。

SoftbankがVodafoneを1兆7千億円というとんでもない金額で買収し、そのすべてのWebサイトを一夜にして変えねばならなかったあの伝説の一夜、「オピント事件」を……

 
私はその頃Yahoo!に在籍しており、いくつかのサービスを担当していました。
当時、Vodafoneでは「Vodafone live!」という独自のサービスを展開していましたが、これが「Yahoo! ケータイ」というものに変わることになりました。ケータイの物理ボタンに「Y!」というボタンがあったのは今となっては懐かしい限りです。

そのため、ヤフーの中でモバイル(今で言うガラケー)版のあるもの、つまりほとんどすべてのサービスは、ページ中の「Vodafone」の記述などを変更する必要があり、Softbankの担当者は、旧VodafoneのページすべてをSoftbank仕様に改編する必要があったのです。

何せVodafoneの買収は(少なくとも下々の人間には)急転直下でしたから、ほとんど時間がありません。もちろん他の仕事も抱える中、今考えても普通なら数週間かけてもいい程度の作業量を、1日で行うようにとの指令が下されたのです。

 
そして、VodafoneがSoftbankに切り替わるその日がやってきます。
エンジニアの方々は泊まり込みでの作業を余儀なくされました。私はディレクターというポジションだったため会社へ泊まったわけではありませんが、自宅にて、関連するページのチェックを行っていました。

幸いにも、Yahoo!チームのページは変更点がそれほど多くなかったこともあり、特に大きな問題は起きませんでしたが、Softbankのページで異変が起きてしまいました。

それは、Softbankの優位性を強調するための「ポイント」を説明するページでのこと。
一部に「オピント」という表記があったのです。

 
「ポイントは、500オピント毎に……」
 

一体なんだこれは。自宅でPCを見ていた私も一瞬考えましたが、しかし本当に一瞬で理由がわかりました。

これは、日本語で「poinnto」とタイプするところを、「opinnto」としてしまった、いわゆるタイポです。しかも、最初にちゃんと「ポイントは」と言っているのにも関わらず……(そして、なぜ「オピント」が正確にすべてカタカナで変換されたのかは、未だに謎とされています)。

それ以外にも、画像として使われた携帯電話がDoCoMoのものだったり、リンクミスが多発していたり、普通ならYahoo!やSoftbankのWebサイトでリンクミスがあれば重大な事故なのですが、とにかく、今となっては伝説の一夜となっています。

しかしもう一度言いますが、あの時のSoftbankチームは本当に大変だったと思います。今考えても、あれを1日でやるのはありえません。

 
「オピント」
今となっては笑えますが、何だか憎めない愛おしい響きです。